あん摩・マッサージ・指圧制度・安全・エビデンス柔道整復(整骨院・接骨院)資格と法律
日本の手技療法と資格・法律:国家資格と民間療法の境界
あはき法・柔道整復師法、医業類似行為の最高裁判決、健康保険が使える条件、広告の規制。
日本では、手技療法の一部が国家資格の業務として法律で定められ、それ以外は資格のいらない民間療法として扱われています。利用者がこの違いを知っておくと、店選びや健康保険の使い方で迷わずに済みます。
1. 国家資格の手技療法
| 資格 | 根拠となる法律 | 業務 |
|---|---|---|
| あん摩マッサージ指圧師 | あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(1947年、通称あはき法) | あん摩・マッサージ・指圧 |
| はり師・きゅう師 | 同上 | 鍼・灸 |
| 柔道整復師 | 柔道整復師法(1970年) | 骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷の整復、固定など |
あはき法では、医師以外の者がこれらの業務を業として行うには、国家資格が必要と定められています。いずれも3年以上の養成課程を修了し、国家試験に合格する必要があります。
2. 資格のいらない手技療法(医業類似行為)
整体、カイロプラクティック、オステオパシー、リフレクソロジー、リラクゼーションのもみほぐしなどは、法律上の資格制度がありません。こうした行為の扱いについて、最高裁判所は1960年の大法廷判決で、禁止の対象は「人の健康に害を及ぼすおそれのある」業務行為に限られるという解釈を示しました。この判決以降、健康に害を及ぼすおそれがない範囲で、資格を持たない人による施術が広く行われています。
リラクゼーション店が「マッサージ」ではなく「もみほぐし」「ボディケア」などの言葉を使うことが多いのは、無資格の人があん摩マッサージ指圧を業として行うことが法律で禁じられているためです。
3. 1991年の厚生省通知
厚生省(当時)は1991年、カイロプラクティックなどの医業類似行為について通知を出し、次のような考え方を示しました。
- 腫瘍、出血性疾患、感染症、リウマチ、骨粗しょう症、椎間板ヘルニアなどの患者には施術を行わないこと。
- 頸椎に対する急激な回転伸展操作を加えるスラスト法は、危険を伴うため禁止すべきであること。
- 施術で症状が改善しない場合は、速やかに医療機関で受診させること。
4. 健康保険が使えるのはどんなときか
| 施術 | 保険が使える主な条件 |
|---|---|
| 柔道整復(整骨院・接骨院) | 急性または亜急性の外傷性の打撲・捻挫・挫傷、骨折・脱臼(骨折・脱臼は応急手当を除き医師の同意が必要)。日常生活の疲れや慢性的な肩こりは対象外。 |
| 鍼灸 | 神経痛、リウマチ、頸腕症候群、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症などで、医師の同意がある場合。 |
| マッサージ | 筋麻痺や関節拘縮などで医療上マッサージが必要と医師が同意した場合。 |
| 整体・カイロ・リラクゼーション | 対象外(全額自己負担)。 |
5. 広告の規制
あはき法と柔道整復師法には広告できる事項の制限があり、施術者の技能や施術方法、効果をうたう広告は原則としてできません。整骨院の看板に「肩こり・腰痛 保険適用」などと書くことは、保険の対象範囲を誤解させるおそれがあります。資格のいらない整体などの広告は、医薬品医療機器等法や景品表示法の観点から、病気が治るといった表示が問題になる場合があります。
6. 利用者向けチェックポイント
- 国家資格の有無と、資格の種類を確認する(資格者は免許証を示せる)。
- 整骨院で慢性的な肩こりや疲労に保険を使うことはできない。
- 国民生活センターには、手技による施術で骨折や神経の損傷を負ったという相談が寄せられている。強い痛みを伴う施術や首の急なひねりは、遠慮なく断ってよい。
※ 法令や通知の内容は改正される場合があります。最新の情報は厚生労働省の公表資料で確認してください。
参考資料
- あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和22年法律第217号)
- 柔道整復師法(昭和45年法律第19号)
- 最高裁判所大法廷判決 昭和35年1月27日(刑集14巻1号33頁)
- 厚生省健康政策局医事課長通知「医業類似行為に対する取扱いについて」(平成3年6月28日 医事第58号)
- 国民生活センター「手技による医業類似行為の危害」(2012年)
本記事は一般的な学術情報の解説であり、診断や治療の代わりにはなりません。強い痛み、しびれ、発熱、排尿・排便の異常、急な脱力などがある場合は、まず医療機関を受診してください。