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制度・安全・エビデンス研究の読み方

研究の読み方:「効果がある」はどこまで信じてよいか

体験談・症例・ランダム化比較試験・メタ解析の違い、プラセボと自然経過、効果の大きさ、手技療法の研究が難しい理由。

「この施術で腰痛が治った」という声は、本当に施術の効果なのでしょうか。手技療法の効果を正しく判断するには、研究の種類と限界を知っておく必要があります。本稿では、このサイトの記事を読むときにも役立つ、研究の読み方の基本を解説します。

1. 「良くなった」には3つの理由がある

施術を受けて症状が良くなったとき、その理由は少なくとも3つに分けられます。

  1. 自然経過:急性の腰痛や首の痛みの多くは、何もしなくても数週間で良くなる。
  2. 平均への回帰:人は症状が最もひどいときに施術を受けに行きやすい。症状には波があるため、最悪の時期の後は、施術と関係なく良くなる方向に向かいやすい。
  3. 施術の効果:施術そのものによる変化(これには、期待や安心感による効果も含まれる)。

体験談だけでは、この3つを区別できません。これが比較の研究が必要な理由です。

2. 研究の種類と信頼性

研究の種類 内容 分かること
体験談・症例報告 個人の経過の報告 新しい仮説のきっかけにはなるが、効果の証明にはならない
観察研究 施術を受けた人と受けなかった人を比べる 関連は分かるが、もともとの違い(年齢、生活習慣など)の影響を除ききれない
ランダム化比較試験(RCT) くじ引きで施術を受ける群と受けない群に分けて比べる 群の違いを偶然に任せるため、効果を最も公平に評価できる
システマティックレビュー・メタ解析 同じテーマのRCTなどを網羅的に集め、統合して分析する 一つの研究の偶然に左右されにくい。根拠の総まとめ

ただし、システマティックレビューも、集めた研究の質が低ければ結論の信頼性は低くなります。そのため現在は、GRADEという方法で「根拠の確実性」を高・中・低・非常に低の4段階で評価することが広く行われています(Guyattら, 2008)。

3. プラセボと「偽の施術」

薬の研究では、見た目が同じで有効成分を含まない偽薬(プラセボ)と比べます。手技療法でも、同じように「偽の施術」と比べる研究がありますが、次のような難しさがあります。

  • 施術者は自分が本物か偽物かを知っているため、完全な盲検化(どちらか分からなくすること)が難しい。
  • 偽の施術でも、体に触れる、話を聞くなどの要素が含まれ、それ自体に効果がある可能性がある。
  • 何が「偽」にあたるのか、研究者の間で合意しにくい。

プラセボの効果は、痛みのように本人が感じる症状で現れやすいことが知られています(Hróbjartsson & Gøtzsche, 2010)。手技療法の効果のうち、どこまでが手技特有の効果で、どこまでが触れられること・期待・安心による効果なのかを分けるのは、今も研究の大きな課題です。

4. 「効果がある」と「効果が大きい」は違う

研究で「統計的に有意な差があった」とは、その差が偶然とは考えにくいという意味で、差が大きいという意味ではありません。たとえば痛みを0〜100で表したとき、5ポイントの差は統計的には有意でも、患者が実感できる変化ではないかもしれません。研究では、患者にとって意味のある最小の変化(臨床的に意味のある最小差)を基準に、効果の大きさを判断します。

5. 研究を見るときのチェックリスト

  • 比べる相手(対照群)はいるか。何と比べたのか。
  • くじ引きで群を分けたか(ランダム化)。
  • 参加者は何人か。少人数の研究は偶然に左右されやすい。
  • 効果はどのくらいの大きさで、どのくらい続いたか。
  • 一つの研究だけか、複数の研究で同じ結果が出ているか。
  • 研究の資金は誰が出しているか。利害関係はあるか。

6. このサイトの記事の書き方

このサイトの記事は、教科書、診療ガイドライン、システマティックレビューを優先して参照し、根拠の強さが分かるように「分かっていること」と「分かっていないこと」を分けて書くようにしています。研究は日々更新されるため、内容は定期的に見直します。

参考文献

  • Sackett DL, Rosenberg WM, Gray JA, Haynes RB, Richardson WS. Evidence based medicine: what it is and what it isn’t. BMJ. 1996;312(7023):71–72.
  • Guyatt GH, et al. GRADE: an emerging consensus on rating quality of evidence and strength of recommendations. BMJ. 2008;336(7650):924–926.
  • Hróbjartsson A, Gøtzsche PC. Placebo interventions for all clinical conditions. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2010;(1):CD003974.
  • Bialosky JE, et al. Placebo response to manual therapy: something out of nothing? Journal of Manual & Manipulative Therapy. 2011;19(1):11–19.

本記事は一般的な学術情報の解説であり、診断や治療の代わりにはなりません。強い痛み、しびれ、発熱、排尿・排便の異常、急な脱力などがある場合は、まず医療機関を受診してください。

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