肩こり・首こり:なぜ起きるのか、何が効くのか
日本人に多い肩こりの実態、筋の張りが生まれる仕組み、受診が必要なサイン、根拠のあるセルフケア。
肩こりは、日本人が最もよく訴える体の不調の一つです。厚生労働省の国民生活基礎調査では、自覚症状として女性では肩こりが1位、男性でも腰痛に次いで上位に挙がっています。「肩こり」という言葉は日本語特有の表現とされ、英語では neck and shoulder pain、stiff neck などと表現されます。
1. 肩こりとは何か
肩こりは医学的な病名ではなく、首の後ろから肩、肩甲骨の内側にかけての、張り、重さ、こわばり、痛みなどの感覚の総称です。主に関わる筋は次のとおりです。
- 僧帽筋上部:首の付け根から肩先にかけて。肩をすくめる、腕の重さを支える。
- 肩甲挙筋:首の横から肩甲骨の上の角へ。肩甲骨を引き上げる。
- 菱形筋:背骨と肩甲骨の内側の間。
- 頭板状筋・後頭下筋群:首の後ろ。頭を支え、位置を感知する。
2. なぜこるのか
肩こりの原因は一つに特定できないことが多く、いくつかの要因が重なると考えられています。
| 要因 | 説明 |
|---|---|
| 同じ姿勢の持続 | デスクワークやスマートフォン操作で、首や肩の筋が低い力で長時間働き続ける。低い力でも休みなく続くと、筋の一部の線維だけが働き続ける。 |
| 腕の重さ | 片腕は体重の約5〜6%あり、肩甲骨は筋で吊り下げられている。腕を前に出した作業は、その重さを支え続けることになる。 |
| 心理的なストレス | 精神的な緊張で僧帽筋の活動が高まることが筋電図の研究で示されている。 |
| 運動不足 | 体を動かす機会が少ないと、筋の血流や柔軟性が低下しやすい。 |
| 睡眠不足・目の疲れ | 関連が指摘されている。 |
なお、「筋に疲労物質がたまる」「血行不良で老廃物がたまる」という説明はよく使われますが、肩こりの感覚がどのような生理学的変化で生まれるのかは、まだ十分に解明されていません。
3. 受診したほうがよい肩こり
次のような場合は、筋の疲れ以外の原因(頸椎の病気、心臓の病気など)の可能性があるため、医療機関を受診してください。
- 腕や手のしびれ、力が入りにくい、細かい作業がしにくい
- 首を動かすと腕に電気が走るような痛みがある
- 左肩や背中の痛みに、胸の圧迫感・息苦しさ・冷や汗を伴う
- 突然の激しい首の痛みや頭痛
- 発熱を伴う、夜も眠れないほど痛む、急に悪化した
4. 何が効くのか
4-1. 運動
首や肩の痛みに対して最も根拠が多いのは運動です。特に肩甲骨まわりや首の筋を使う筋力トレーニングは、職場の首・肩の痛みを減らすことが複数の臨床試験で示されています。1回数分でも、毎日続けることが大切です。
4-2. 姿勢をこまめに変える
「正しい姿勢」を保つことより、同じ姿勢を続けないことが重要です(「姿勢と運動制御」の記事を参照)。30分に一度、肩を回す、立ち上がるなどの小休止が勧められます。
4-3. マッサージ・指圧・鍼
短期的に張りや痛みを和らげる効果が報告されています。その場の楽さを得る手段としては合理的ですが、効果を続けるには運動との組み合わせが勧められます。
4-4. 温める
入浴や蒸しタオルで温めると、こわばりが和らぐと感じる人が多い方法です。
5. 整体・もみほぐし店を利用するときのポイント
- 強い圧で揉むほど効くわけではない。翌日に強い揉み返しが出るなら、圧が強すぎる可能性がある。
- 首を急にひねる手技は、受けるかどうか自分で選んでよい。
- 自宅でできる体操を教えてくれる店は、効果を続ける助けになる。
参考文献
- 厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」(2022年)
- Andersen LL, et al. Effect of two contrasting types of physical exercise on chronic neck muscle pain. Arthritis & Rheumatism. 2008;59(1):84–91.
- Gross A, et al. Exercises for mechanical neck disorders. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2015;(1):CD004250.
- Lundberg U, et al. Psychophysiological stress and EMG activity of the trapezius muscle. International Journal of Behavioral Medicine. 1994;1(4):354–370.
本記事は一般的な学術情報の解説であり、診断や治療の代わりにはなりません。強い痛み、しびれ、発熱、排尿・排便の異常、急な脱力などがある場合は、まず医療機関を受診してください。