オステオパシー:4つの原則と主な手技、国による違い
米国の医師資格DOと各国のオステオパスの違い、マッスルエナジーやカウンターストレイン、頭蓋療法の評価。
オステオパシー(osteopathy)は、1874年に米国の医師アンドリュー・テイラー・スティル(A.T. Still)が提唱した医学体系です。1892年にはミズーリ州カークスビルに最初の学校が設立されました。名前はギリシャ語の osteon(骨)と pathos(苦しみ)に由来しますが、骨だけでなく筋・筋膜・内臓・循環を含む全身を対象とします。
1. 4つの原則
現代のオステオパシー教育で示される原則は、次の4つにまとめられます。
- 身体は一つの単位であり、人は身体・心・精神の統合体である。
- 身体には自己調節・自己治癒の能力がある。
- 構造と機能は相互に関係している。
- 合理的な治療は、これらの原則の理解にもとづく。
2. 国による立場の違い
| 国・地域 | 位置づけ |
|---|---|
| 米国 | オステオパシー医(DO)は医師(MD)と同等の資格で、薬の処方や手術も行う。手技(OMT)を行う割合はDOの中でも人によって差が大きい。 |
| 英国 | 1993年のオステオパス法により法制化。手技療法の専門職として登録制。 |
| フランス・豪州など | 手技療法の専門職として法制化。 |
| 日本 | 法律上の資格はない。民間の教育機関が養成している。 |
3. 主な手技
| 手技 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| HVLA | 高速・低振幅のスラスト | カイロプラクティックと同系統 |
| マッスルエナジー・テクニック | 患者自身が施術者の抵抗に対して軽く筋を収縮させ、その後の弛緩を利用して可動域を広げる | F. ミッチェル Sr. が体系化。能動的で穏やか |
| カウンターストレイン | 圧痛点が最も楽になる姿勢を約90秒保持する | L. ジョーンズが考案。痛みの強い時期にも使いやすい |
| 筋膜リリース | 筋膜に持続的な張力をかける | 筋膜の記事を参照 |
| 頭蓋オステオパシー | 頭蓋骨のわずかな律動(一次呼吸メカニズム)を感じ取り調整するとされる | W.G. サザーランドが1930年代に提唱。根拠は弱い |
| 内臓マニピュレーション | 内臓の可動性を手で評価・調整するとされる | J.-P. バラルが体系化。根拠は限られる |
4. 科学的根拠
慢性腰痛に対するオステオパシー手技(OMT)は、Licciardone ら(2013)の大規模ランダム化比較試験で中程度の改善が報告されています。一方、頭蓋オステオパシーについては、「頭蓋骨の律動」を複数の施術者が一致して触知できないこと(評価者間信頼性が低いこと)が繰り返し示されており、システマティックレビューでも効果を支持する十分な根拠はないとされています。
「構造と機能は相互に関係する」という原則自体は、運動器リハビリテーションの考え方と矛盾しません。しかし、個々の手技が想定どおりの組織変化を起こしているかどうかは、手技ごとに分けて評価する必要があります。
参考文献
- Licciardone JC, et al. Osteopathic manipulative treatment and ultrasound therapy for chronic low back pain: a randomized controlled trial. Annals of Family Medicine. 2013;11(2):122–129.
- World Health Organization. Benchmarks for training in osteopathy. 2010.
- Seffinger MA, ed. Foundations of Osteopathic Medicine. 4th ed. Wolters Kluwer; 2018.
本記事は一般的な学術情報の解説であり、診断や治療の代わりにはなりません。強い痛み、しびれ、発熱、排尿・排便の異常、急な脱力などがある場合は、まず医療機関を受診してください。